「支援学級にいたけど、高校には行けるのかな?」
「どんな高校なら、子どもが安心して通えるんだろう?」
中学校の特別支援学級に在籍するお子さんを持つ保護者の方から、こうした声をよく聞きます。
進路選択の時期になると、普通の進路情報誌には載っていないことばかりで、不安になりますよね。
でも実際には、支援学級出身の生徒の約95%が高校などに進学しています。
(出典:国立特別支援教育総合研究所「特別支援教育資料」2024年度版)
進学先は大きく分けて、
①普通科高校 ②定時制高校 ③通信制高校 ④特別支援学校高等部
の4つ。
どの道を選んでも、子どもの特性や希望に合わせて学べる選択肢がきちんとあります。
支援学級から高校へ──広がる進学の選択肢

かつては「支援学級=高校に行けない」という誤解がありました。
けれど今は、特別支援教育の理解が進み、高校でも支援体制が整いつつあります。
各都道府県の教育委員会では、中学校との連携を強化し、
支援が必要な生徒への引き継ぎや合理的配慮を行うよう取り組んでいます。
授業中の支援員配置、試験時の時間延長、相談員による個別サポートなど、
一昔前にはなかった制度が少しずつ整ってきました。
つまり、支援学級で学んできた生徒も、
自分に合ったペースで高校生活を送れる環境が広がっているのが、2025年の今です。
高校のタイプ別に見る「進学しやすさ」と特徴

① 普通科高校(全日制)
支援学級出身の生徒でも、一般の中学校と同じように普通科高校へ進学できます。
最近では、入試時に「合理的配慮」を行う学校も増えており、
たとえば東京都の「チャレンジスクール」では、学び直しや個別サポートを受けながら学ぶことが可能です。
入学後は、支援コーディネーターやスクールカウンセラーが常駐している学校を選ぶと安心。
ただし、クラス人数や課題量が多い学校では、環境の変化が負担になることもあるため、
学校見学の際に「サポート体制」をしっかり確認しておきましょう。
② 定時制高校
授業が午後・夜間などに分かれており、少人数で落ち着いた環境で学べるのが特長。
「中学校では支援を受けていたけれど、もう少し自分のペースで通いたい」というお子さんに合っています。
定時制には多様な背景を持つ生徒が在籍しており、
先生方も発達特性や不登校経験への理解が深い傾向があります。
生活リズムを整えながら学び直すことができる点も大きな魅力です。
③ 通信制高校
支援学級出身の生徒が安心して学べる環境として、近年もっとも注目を集めているのが通信制高校です。
登校日数を自分で調整でき、在宅学習とスクーリングを組み合わせて高校卒業資格を得られます。
たとえば全国展開している
第一学院高校、クラーク記念国際高校、鹿島学園高校などでは、
発達特性や不登校経験のある生徒を対象にしたコースを設けています。
スクールカウンセラーや学習コーチが常駐し、
安心して高校生活を続けられる仕組みが整っています。
また、通信制高校の多くには「サポート校」という学習支援施設が併設されており、
通学型・在宅型・オンライン型など、多様なスタイルから選ぶことができます。
④ 特別支援学校高等部
中学校の特別支援学級から、特別支援学校の高等部へ進学するケースもあります。
生活スキルや就労準備を重視した実践的なカリキュラムが中心で、
「卒業後に社会で自立したい」「仕事に向けた力をつけたい」
という生徒に適しています。
職業体験や校外実習の機会も多く、
企業や地域と連携した教育活動が行われているのが特長です。
安心して通える高校を見つけるポイント

進学先を選ぶときに大切なのは、「支援学級出身でも入れるか」より「入ってから安心できるか」です。
実際、どの高校でも支援学級出身者を受け入れることは可能ですが、
学校ごとに理解や支援体制の差があります。
説明会や個別相談で、次のような点を確認してみましょう。
支援コーディネーターやスクールカウンセラーが常駐しているか
入学後も「個別の教育支援計画(IEP)」を継続できるか
試験や授業で合理的配慮が受けられるか(例:時間延長、課題量の調整)
保護者・学校・支援機関の三者で定期的に面談があるか
また、学校側に「どんな支援が必要か」「どのような環境なら学びやすいか」を具体的に伝えておくと、
入学後の支援がスムーズになります。
学校探しのコツと相談先

進路情報はネットだけでなく、公的機関の情報や直接相談が確実です。
中学校の進路指導の先生
→ 過去にどんな生徒がどの高校に進学したかを把握しています。教育委員会・特別支援教育コーディネーター
→ 各地域の支援体制・高校での受け入れ状況を教えてもらえます。オープンスクール・学校説明会
→ 実際の雰囲気を見て、先生や生徒の表情をチェック。通信制高校の個別相談・体験入学
→ 通い方やサポート体制を具体的に確認できます。
また、最近では自治体によって「チャレンジスクール」「多様な学び支援校」など、
学び直しを支援する制度も増えています。
東京都、神奈川県、大阪府などでは、
こうした学校が地域に根ざした形で広がっており、
進学のハードルを下げる仕組みが整いつつあります。
受験・入学時に気をつけたいポイント

📝 内申書と報告書の扱い
支援学級在籍の場合も、通常学級と同じく内申書が作成されます。
また、必要に応じて中学校から「支援内容を記した報告書」が高校に提出されることもあります。
これは不利になるものではなく、高校が支援を継続するための大切な資料です。
💬 面接での伝え方
面接では「どんなサポートがあれば学びやすいか」「得意なこと」を前向きに伝えましょう。
保護者同伴の個別面談を行う学校も増えており、
お互いに支援の方法を共有できる機会になっています。
🤝 合理的配慮の申し出
入試時に合理的配慮を希望する場合は、
医師・心理士・学校の先生などによる意見書が必要になることがあります。
早めに中学校を通じて高校へ相談しておくと安心です。
進学後も「安心できるつながり」を

高校に進んでからも、最初の数ヶ月は大きな変化があります。
新しい教科・時間割・人間関係に戸惑う生徒も多く、
保護者としては「安心できる居場所づくり」をサポートしていきたいですね。
登校しづらい時期があっても、「行けなくても大丈夫」と伝える
学校と連絡を取りながら、家庭でのリズムを整える
支援員・カウンセラーなど専門職と定期的につながる
こうした小さな積み重ねが、子どもの自信や自己肯定感につながっていきます。
まとめ|“行ける高校”より、“合う高校”を選ぼう
支援学級出身の生徒が進める高校は、年々広がっています。
重要なのは「どこに入れるか」ではなく、「どこなら安心して通えるか」です。
普通科・定時制・通信制・特別支援学校——どの道にも、それぞれの良さがあります。
子どもの得意やペースを大切にしながら、
焦らず、納得できる進路を一緒に見つけていきましょう。
参考文献・出典